夫婦ですが何か?


感情的に行為に溺れて一度二度と欲を逃す。


その間に彼女は幾度となく達して乱れて啼いて。


いつもより余裕がないのは知っていた。


知っていた筈・・・・だったのに・・・・。



「・・・・・なんか・・ダメ・・」


「もう・・・何回も聞いたよ・・・・」



どこか戸惑う様な響きを疑問にも思わず律動を強めると、すでにギリギリまで高まっていた彼女の限界。


甘く耳に響いて残る声と彼女の快楽に誘われ、少し引きずられそうになり。


それでもグッと踏みとどまって止めていた息を吐き、快楽に落ちた彼女を確かめようと視線を走らせた瞬間。


一瞬の呆け。


そして困惑。



「・・・っ・・・千麻・・ちゃん?」


「・・・・・」


「・・・・あ、あれ?・・・千麻ちゃーん・・・?」



視界に捉えた彼女の不動と、しっかり目蓋の下ろされた紅潮したままの顔。


名前を呼んでも返事のない彼女の頬に触れてくすぐっても反応はなく。


一瞬動揺に固まって思考もフリーズしていたけれどすぐに再起動。


そして打ち出した答え・・・。



「う、うわぁ・・・・勝っ・・・ちゃった?」



自分しか意識ある人間はいないというのに苦笑いで現状を呟いて、乱れて意識の飛んだ彼女を見下ろし数秒。


なんか・・・、


めっちゃ・・・、



「反則技で勝った気分だ・・・・・」



何だろう・・・この罪悪感にも感じる敗北感。


勝ったのに負けたような・・・。


ってか・・・、



「俺の・・・馬鹿・・・」



そう自分に呆れて詰ると意識のない彼女の体を抱きしめて耳元で囁く。




「・・・・狡い勝ち方して・・・ごめんね」




きっと彼女の意識には届いていない謝罪だけども言わずにはいられない程後ろめたくて。


ゆっくりと体を起こすと彼女の体を解放して抱き上げソファーに寝かせる。


床に落ちていたタオルケットを拾い上げ、彼女の隣に横たわりながら体にかける。


そしてようやく息も動悸も落ち着いて、改めて彼女の顔を見つめて胸が熱い。



抱いて・・・・しまった。



ずっとずっと望んで・・・でも、出来なかった、及ばなかった行為をついに。


思ったようなリベンジの形ではなかった上に、どこか理由こじつけの事の始まり。


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