夫婦ですが何か?






決して、そうしたかった。という様な内容ではないのに。


そういう未来もあったと2人で納得して予想されていると、どこか私が邪魔者のように感じて。


あの夢の再現の様な今に心臓が再び暴れだしてその心音に酷く焦る。


2人に聞こえる筈もないというのに、今にも響きそうなそれを抑え込むように胸に触れて。


聞きたくないとも思うのに、縫い付けられたように動きが取れなくなってしまった。


2人だけの時間。


あの時の2人だけが知り得る空気を感じる今に自分の居場所がなくなっていくように感じる。


現実は私が彼と隣り合う現在(いま)であった筈なのに。


馬鹿みたいだ。


こんな感覚。


今にも・・・・もう一つの未来予想図に取って代わられそうな。



『・・・・茜さんは・・・想像した事ないですか?』


『・・・・まぁ、しなかったと言ったら嘘になるけど・・』



そうですよね。


絶対にしてますよね。


薄々気がついてはいた事実を彼自身から肯定されるとますます落ち込んでしまう。


昔であるなら・・・それこそ契約婚初期であるなら何とも思わなかった彼の彼女への想い。


でも今は違う。


やはり・・・・気持ち通わせた後ではどこか落ち着かないものだ。


本気で好きだった過去を知っているから、誰より近くで見ていたから。


その傷のせいで・・傷によって私に縋った彼だから。


今でも・・・その介入が怖い。


どんなに心通わせようと、結局彼女への想いには敵わないのではないかと。


自信がないのだ。


所詮・・・・私は代わりの埋め合わせのピースに過ぎなかったのだから。



『茜さん、例えばの話ですが・・・』


『うん?』


『例えば・・・あの瞬間に今戻れたとしたらどうしますか?』


『あの時って・・・お互いにこの未来を選んだ瞬間って事?』


『はい、もう一つの選択肢を選べるチャンスを得るとしたら・・・、それか・・・

もし、・・・今私が茜さんを好きだといったらどうしますか?』




ああ・・・どうするの?


もし・・・そんな、


あなたが死ぬほど望んだ瞬間が巡ったら。


望んで苦しんで、私に縋ってしまうほど落ちた時間をなかった事に出来るとしたら・・・。


間違いなく・・・その手を伸ばすのは・・・・。




『芹ちゃんが今でも好きだよ・・・』




そうでしょうとも・・・。



< 733 / 740 >

この作品をシェア

pagetop