夫婦ですが何か?
ーーーーNEXT MORNINGーーーー
目が覚めるといつの間にか隣に眠っている彼の姿。
そして何故かしっかり自分の手に絡み付いている彼の指先。
一瞬昨夜の事は全て夢だったのではないかと思うほどいつもと同じような朝の到来に一瞬呆けて不動のまま彼を見つめる。
もう幼いと感じない顔立ち。
でもその凄艶さは磨きがかかって、いい意味で大人の深みもかかって【良い男】だと正直思う。
その良い男が夫であるのだから私はなかなかの当たりくじな人生なのだろうかと小さく口の端を上げると彼の頬に指先を伸ばした。
柔らかく頬に滑らせれば、起きはしないものの小さく声を漏らして動きを見せて、それでも長い睫毛の目蓋は閉じられたまま口からは小さく寝息が響く。
あの後・・・長く起きていたのだろうか?
そんな疑問を抱きながら軽く身を起こして時計を確認すれば寝坊もいいとこだ。
救いは今日が土曜日であった事。
確認した時刻はすでに10時を回っていて慌ててしっかり身を起こせばベビーベッドで泣きもせず立ち上がって遊んでいる愛娘の姿。
ああ、母親失格。
そんな事を思いながら長い髪を掻きあげて、とりあえず眼鏡で視界をクリアにすると彼を残してベッドを抜ける。
翠姫を抱え上げゆっくり寝室を抜けたと同時にトイレからゆっくり身を出す姿に視線を走らせる。
「・・・・おはようございます」
「・・・・・・・おはようございます。と、いうか・・・・申し訳ありませんでした」
視線が絡んだ瞬間に申し訳なさそうな苦笑いで謝罪を口にした芹さんが口元を覆いながら私を見つめる。
その謝罪よりも意識がいってしまう彼女の青い顔に笑顔を返すわけにもいかず。
「いえ・・・、我が家としては特別気にしておりませんが・・・、その・・体調大丈夫ですか?」
「・・・・二日酔いです・・・・、お酒・・そんなに強くないのに呑みすぎて・・・・」
言いながらも目を細めて何かを必死に堪える姿に駆け寄って、ゆっくり体を支えながらリビングに向かう。
とりあえず洗面器なんかを用意してキッチンに向かうと水を汲んで彼女に手渡した。
「か、重ね重ね申し訳・・・」
「いえいえ、もしご予定無ければウチでゆっくり体休めてからお帰りください」
「本当・・・私昨日から何しているんでしょうね」
情けない。と言いたげな笑みで水を飲んだ彼女を客間に戻し、とりあえず回復するまで滞在するように促して様子を伺った。