あい、君。
少し肩をびくつかせた感じもするが、歌をいれ始めた。
「茉智はなにを歌うのかなーっ!」
ルンルンしながら指田さんは篠瀬さんをみている。
リモコンの中を見る気はないようだ。
テレビ画面に表示された文字は、“キュンキュン高鳴る鼓動”
…………。
盛り上がっていた室内は一瞬にして静まった。
ただ無情に“キュンキュン高鳴る鼓動”の音楽だけが響き続ける。
…なんだこの歌は。
イタい題名。
それを歌う篠瀬さん。
…シュールだ…。
歌が終わると、音楽で誤魔化されていた静寂が戻ってきた。
「ご、ごめんなさい…。ドン引きだよね…。」
「そ、そんなことないよ!!茉智の声可愛いし、歌詞も…その、個性的でよかったと思う!」
すかさず指田さんがフォローをいれる。
「はははっ、そうだよ。その歌、茉智ちゃんが好きな歌なんだろ?
気にすることないよ!
むしろ黙りこくっちゃってこっちこそごめんっ」
翼も俺の横で顔の前で手のひらをくっつける。
…翼はかっこいいな。
篠瀬さんはようやく気持ちを落ち着かせたのか、フードメニューを見始めた。
何曲も歌を聴いたせいか、みんなの意識もあっちこっちにそれ、親睦を深める人も多かった。