あい、君。
「どうかした?」
下駄箱に入ってすぐのところで聞いてみた。
彼女の威勢のよかった顔は、今はとても悲しそうな顔になっていた。
「…なんでもない。」
そんなわけないだろ。
でも僕はその言葉を口にすることはできなかった。
彼女がそれでも強がろうとしていたからだ。
僕は彼女の頭にポンっと手を置き、
「なにかあったらクラスにおいで。」
それだけ言い残して僕は教室に向かっていった。
そういえば彼女の名前、聞いてないなぁ。
僕が教室に入ると、ほぼ人で埋まっていた。
席が空いているのは五個ほどだけだった。
僕が座るはずの席に鞄をおろす。
隣はまだ来ていなかった。
…暇だな。
あと5分くらいで先生もくるだろう。
彼女は大丈夫かなぁ。
そんなことを考えていたら、隣の生徒が来たようだった。
バックを無造作に机におく。
「うっぇー静か!」
この静かな教室でよくそんな大声で喋れるな…。
それくらい大きな声で呟いていた。
僕の隣は背の高い男子だった。
彼をまじまじ見ていると、彼はバッとこっちを見た。
うわ…やばい。
見てるの変に思われたかな。
そんな心配を他所に、彼はにやっと笑った。