ひまわりの約束
「…6年前のあの日
引っ越すことが決まってたけど
あの頃の俺は言えなかった。
葵が悲しむ姿を見たくなかった。
でも気持ちだけは伝えたかった。
最後に…
だからひまわり畑で
お互いの気持ちを確認した。
…俺の心の支えにするために。」
「…うん。っ…」
「次の日も会いに行くつもりだった。
荒木屋。いつも通った駄菓子屋。
でも、出発時間が早まって。
行けなかった。
最後に挨拶。しようと思ってたんに
できなかった…
結局俺が葵を悲しませた。
あの日。会いに行けんくてごめんね。」
「…ううん。いいの。
…っ話してくれて。ありがとう。」
あたしはゆっくり
日向に腕を回した。
「…葵。」
「…大丈夫。もう。気にしてないけん。」
「…俺に近づけば、お前は、また悲しむことになるかもしれない。」
「…大丈夫。その覚悟は。できてるから。…顔上げて?」
あたしが腕を離すと
日向はあたしを真っ直ぐに見つめてきた。
「…教室。戻ろ?…先生たち、怒ってるかもだけど…」
あたしは日向に
笑顔を見せると
教室に向かって歩き出した。