ひまわりの約束
「…なるほど。そういうことか。」
「そそ。だからこれが…」
…意外と理解すんの早いな。
さすが進学校の特進クラスに
通ってただけあるわぁ。
「…はい。これで1枚目。おーわりっと。」
「…はぁ。だり。」
「んもー。だるいだるいってー。
このままレポート出せなかったら
卒業できなくなるんよ?
半年留年なんじゃん。」
「はぁ。
…別に俺はいいし。
それはそれで
半年留年しようが1年留年しようが
卒業できたらそれでいい。」
日向はそう言ってベッドに座ると
ポテチの袋を開けて食べ始めた。
「日向。そりゃないだろ?
みんなで卒業したくねぇのかよ。」
「…俺には関係ねぇよ。
そんなこと。
勉強だって別に力入れてする必要はない
し
みんなでするなんて…」
「…ふざけないでよ。」
「あぁ?」
凪紗の言葉で
部屋の空気は凍りついた。
………っ
重たい空気
なにこの緊張感は…
「日向くんはさ?
くだらないって
思ってる?
こうやってさ
みんなで勉強するの。
仲間でワイワイ騒ぐのも
勉強するのも
一生懸命
なにかをすることも
日向くんにとって
それはくだらない無意味なもの?
……それなら
日向くんは腐った人間だよ。
ひねくれたやつだよ。」
「…凪紗。」
凪紗の日向に向けられた真剣な眼差し
それを日向は受け止めるように
見つめていた。
「あたしは女優って仕事をしながら
学校と両立をして6年
正直大変だよ。
通信にしたけど
両立は大変。
でも
学校の友達と過ごす時間は
ワイワイ騒ぐ時間も
みんなで卒業のために
勉強するのも
全部今しかできないことなんだよ?
仕事をし始めたら
オトナって縛りに囚われて
そんなこと言ってられない
遊ぶのも
騒ぐのも
オトナになれば
そんなできなくなる。
今って時間は
あっという間に過ぎちゃうんだよ?
高校生って肩書きで
居られる時間だってあと3ヶ月。
こんなのすぐに過ぎて
みんなそれぞれの道に行くの。
離れ離れになる前に
たくさんの楽しい思い出
作りたいんだよっ!!!
ここに居る
葵、赤崎くん、日向くん
今日来れなかった
湖南くん、真奈、希衣ちゃん
そして
クラスのみんな
みんなかけがえのない。
大切な人たちなんだから!!」
「…はぁ。
俺にはくだらねぇよ。
そこまで一生懸命にして
何になんだよ!!
結局そういうのはな。
裏切られて終わんだよ。
失って1人になんのがオチ。
離れ離れになりゃ
疎遠になって
思い出も霞んで
色褪せて…」
ーーーーーーーバシっ
日向の言葉は
最後まで発せられることなく遮られ
それと同時に叩く音が部屋中に響いた。
「…ってぇなぁ。なにすんだよ。煌月!!!」
「…お前。いい加減にしろよ。
凪紗ちゃんがどんな気持ちで言ったのか
お前わかんのかよ。」
「あぁ。わからねぇよ。」
「…マジで腐れたやつだわ。
…もう帰ろうぜ。こんなやつ
留年でもすりゃいいやん!!!!」
「あぁっ。ちょっ!赤崎くん。」
「…ごめん。葵。あたしも、帰るね。
なんか気分悪いし。」
「…そっか。…じゃあ。駅まで送ってくよ。」
「さっさと出てけ。帰れ!!!」
「おぅ。言われなくたって。」
赤崎くんの怒りは収まることなく
あたしたちは日向の家を後にした。