ひまわりの約束



〜日向side〜



俺は葵の言葉にハッとした。


葵に言われるまでは
モヤモヤしてたけど


「…俺。怖かったんだ。

もうこれ以上
何も失いたくなかった。

深く感情移入すると
離れるのが辛くなるから
失ったときのしんどさは半端ないから



できるだけ
深く付き合うことを避けてきた。



でもいつの間にか

お前たちと
深く付き合うように
なってたみたいだな。


自分では
気づかないようにしてたけど。」




「…大丈夫。日向は一人じゃない。
あたしがいるじゃん。

赤崎くんだって
湖南くんだって
凪紗に真奈に希衣ちゃんも

クラスのみんなも


お父さんや花凛さんたち家族

心の中にはお母さんだって

日向の周りには
常に誰かいる。


だから安心して?
1歩踏み出してみよ?」


「…ありがと。葵」


「…まだ泣いてる?」


「…あぁ。もう大丈夫だ。」


…葵に言われたからこそ
気づけたかもしれない



もう自由に生きていいんだって。


いつしか俺は
悲しい現実から逃げたくて
心を閉ざした。

なんでも適当にして
どうでもいいと思って

全部投げやりで済ませてた。

大切なものを作りたくなくて
周りとも関わらなくなった。


過去に心を縛り付けられてたんだ。


でも葵は
それをぶち壊してくれた。


めちゃくちゃにしてくれた。


だから気づけた。


来夢の言葉
煌月の言葉
海人の言葉


葵や凪紗の言葉


この8ヶ月で
俺にかけられた言葉たちの意味を




「…日向。ありがと。
送ってくれて。」


「あぁ。もう遅くなったしな。
すぐそことはいえ
暗い夜道は危ねぇから。

…今日は。ありがとうな。葵」


「ううん。いいの。

じゃあまた明後日。学校でね。」



「おう。おやすみ。」



俺はそう言って葵と別れると
足早に家に帰った。



「…ふぅ。なんだか疲れたわ。」


でも心は軽い。

モヤモヤが吹っ切れた感じで



♪〜♪〜


パーカーのポケットに入れてた携帯が鳴り響いた。


…誰だよ。ったく。


「…あい。」


「…日向?」

「…さくら。どしたんだよ。」





「…辛い」


「…なにが。辛いんだよ。」


「…ひとりぼっち。
寂しいよ。辛いよ。」


電話越しに聞こえる
震えた声


「お前。今どこだ。
ちゃんと家にいるか?」


「…家にいる。死なないから大丈夫。」


「…そっか。ならさ。明日、学校来るか?」

「…明日は1日講義。」

「…俺も行くから。ちゃんと話きいてやる。」


あいつは独りじゃない。

…気づいてないだけ。
…気づかないようにしてるだけ。

…あいつも俺と同じように
大切なものを失った経験があるから

失うのが怖くて
周りにいる人たちと深く関わろうとしないんよ。


あいつも苦しんでる。



「…放課後6階のテラスに来いよ。

待ってるから。」


俺はそう告げて電話を切った。


…俺が葵から
心を解放してもらったように


さくらも心の縛りをほどいてやらないと
来年度1年は辛いまま過ごすことになる

台無しにはして欲しくない。
せっかく1年留年という名の
時間が与えられたんだから
有意義に過ごして欲しい。

高校生活を満喫して欲しいから。



「…あぁ。希衣ちゃんか。

道重さくらと仲良しの奴把握できた?」


「うん。リサーチ完了。男女5人で
みんな1つ年下のベーシックコースみたい。」

「…そっか。わかった。
話がしたいけど
誰か一人連絡先わかる?」


「男子1人は弟の友達やったけん。聞ける!」


「了解。至急頼むわ。」


「はぁい。またメッセ飛ばすー。」


ピっ


…はぁ。
これでまずは第一歩。

さて明日は何人集まってくれるかな。

さくらとつるんでる奴らは。





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