Je te aime ~愛しき人よ永遠に~


『………。』
何処からか声がする…。


『伊崎さん!』
私は寝ぼけ眼で顔を上げた。

『もう。とっくに授業終わったよ。』
クラスメイトが起こしてくれた。


『ありがとう。』
私はまだぼんやりした顔で返事をした。
学校に友達なんて居ない。
だから名前なんて覚えてない。


声をかけたクラスメイトは自分の席に戻っていった。
何処にでも一人は世話を焼いてくれる人が居るもんだ。


私は両手を上げて延びをして、授業に使うものなど1つも入っていないかばんを机において、帰り支度をした。


ホームルームが終ると、私はスルリと教室から出て、バイト先に向かった。
足取りが軽い。
何だかんだ言っても、ワクワクしてる自分がいる。


従業員用の出入り口に入り、警備に声をかけた。
『おはようございます。』

警備員は慣れた手付きで私に声をかけた。
『おはようございます。』


私は女子更衣室がある階の従業員用のエレベーターで3階まで上がって扉の前の長椅子に腰かけて、加藤先輩を待った。
時間より大分早く着いてしまったから、制服とかロッカーの鍵とかを貰っていなかったのだ。


暫くすると、先輩がやって来た。
私は長椅子から立ち上がって挨拶をした。
『おはようございます。宜しくお願いします。』


先輩はニッコリ笑って答えた。
『こちらこそ。じゃあ色々教えるから入って。』


私は先輩の後に続いて更衣室に入っていった。



一通り教えて貰い、いよいよ店に行くことになった。
知らない人が居る。
私は少し緊張しながら店に向かった。


『おはようございます。』
先輩が言った。
私も続いて挨拶をした。
『おはようございます。伊崎と言います。今日から宜しくお願いします。』


するとあちこちから声が聞こえた。
『おはようございます。宜しく~。』

先輩は私を見て言った。
『今日はオーダーを取ってから料理をお客様に渡すまでの流れを一通り覚えて。
分からないことはその都度私に訊いて。
今日は私の側で私の動きを見ててね。』


私は『はい。』と返事をして、メモ帳を取り出しながら先輩の動きを邪魔にならないように見ながらメモをした。


先輩は愛想よく客の注文を素早く取り料理に取り掛かり手際よく作り上げ、客に渡した番号札を読み上げ、料理を渡して行く。


無駄な動きがない。
時間はあっと言う間に過ぎて行った。
店が閉店して、客が居なくなったとき、私はやっと回りを見る余裕が出来た。
見渡すとみんな私と年が変わらない若いバイトばかりだった。
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