Je te aime ～愛しき人よ永遠に～

車は夜の街を走り抜け、ビリヤード場に着いた。
私は文に言った。
『私が行ってくる。文はここで待ってて。居たら必ず連れてくるから。』


文は黙って頷いた。


私は階段を駆け上がりビリヤード場の扉を開けた。
結構混んではいたが、広くない空間なので見渡せば居るかどうか直ぐ分かる。


『アレ。文ちゃん。どうしたの？』
マスターの声がした。

私はマスターに向かって言った。
『ナーちゃん来てる？』

マスターはキョトンとして答えた。
『いや。今日は来てないよ。来たら伝えようか？』

私は頷きながら返事をした。
『お願いします。』


それだけ言うと、階段を駆け下り車に戻った。
『まだ、来てない。違うビリヤード場があるからそこまで行ってもらえる？』

文がエンジンをかけ車は走り出した。
『奈穂子の親から電話があったんだ。居なくなったって。』

文は運転をしながら私にポツリポツリと話し始めた。
私も前を向きながら黙って聞いていた。


『なんで何時もアイツはフラフラするんだ？』

文は独り言のように呟いた。


『淋しいんだよ。文は端から見たらフワフワしていて、滅多に言葉にしないでしょ。私は文のそういう所知ってるけど、ナーちゃんには分からないんだよ。』


文はムッとしながら言った。
『一緒にいれば分かるじゃん。』


私は前を向きながら答えた。
『私は分かるけど、ナーちゃんには伝わらなかっただけ。』