Je te aime ～愛しき人よ永遠に～

夏樹の家は母屋の隣に増築されていて、１戸の家の造りになっていた。
そこで1人で住んでいる。


ナーちゃんと駿は2人で何やら話しながら笑っていた。
私は目を光らせていると、突然夏樹が私の視界に入って言った。
『ねぇ。外行かない？』


『なんで？』
私は無愛想に答えた。


夏樹はめげずに続けた。
『飲み物とか食べ物買いに行こうよ。俺。喉乾いたし、冷蔵庫に何も無いから。』


私は諦めて力なく頷いた。
私と夏樹は近くのコンビニに向かった。
何を話したか、何を聞いたかなんて全く覚えていない。
夏樹は1人で喋っていた。


突然夏樹が私の腕を掴んだ。
今日はつくづく腕を掴まれる日だ。

『何？』
私は少し怒りながら夏樹を睨んだ。

夏樹はニッコリ笑って言った。
『ねぇ。アヤさん。俺と付き合わない？』


私は素っ気なく即答した。
『付き合わない。』


夏樹は少し驚いた様子だった。
私は冷静に夏樹を見ていた。

確かにモデルの様に綺麗な男の子だ。
でも、この笑顔の裏に自分でもそれを自覚し、最大限に利用してきたのだろう。


私にはその笑顔は嘘で薄っぺらに思えた。
全く魅力的に見えなかった。
逆に冷静になれた。


『なんで？ナーちゃんからフリーだって聞いたよ。俺じゃダメ？』


私は至って普通に答えた。
『フリーでも、付き合わない。』


すると夏樹は悪びれず言った。
『俺。初めて振られたよ。でも、諦めないよ。絶対アヤさんを落とすよ。』

私は鼻で冷たく笑って言った。
『勝手にすれば。私には通じないよ。』


夏樹はやっと黙ってくれた。
私達は黙って夏樹の家に着いた。


ドアを開けると、ナーちゃんと駿はベッドで寝ていた。
全裸で・・・・。


私は持っていた袋を落とした。
許さない。
靴のままベッドに向かおうとした私を夏樹は私を抑え込みそのまま外に連れ出した。


『離してよ！』
私は夏樹の腕を振り払おうともがいた。
夏樹はそれを力任せに抑えながら言った。

『あの2人付き合ってるんだから、当たり前でしょ。』


私はその言葉で一気に力が抜けてその場にへたりこんだ。
《何だって？今何て言ったの？付き合ってる？文は？えっ。どういう事？》

頭の中に疑問符が渦巻き声に出した言葉は、
『何だって？』


へたりこんだ私の隣に座り込んだ夏樹が冷静に私の問に答えた。
『あの2人、付き合ってんの。知らなかったの？』


ゆっくり夏樹を見ながら私は夏樹に質問した。
『何時から？』


夏樹は少し考えながら答えた。
『ちょっと前から。そんで、アヤさんの話が出て、紹介してもらいたいって言ったんだ。』


私の頭の中は文は知っているのか？
文とはどうなったのか？
ナーちゃんに聞き出さなければ。
その事がグルグル頭の中を駆け回っていた。


どれ位時間が過ぎたか分からない。
夏樹はずっと私の隣に座り呆然としている私に付き合ってくれていたが、ゆっくり小さな声で私に言った。

『ねぇ。大丈夫？もうそろそろ中に入ろう。』


私の手を触ろうとしたのを私は振り払い、1人で立ち上がった。
無表情の私に夏樹は少し心配そうに声をかけた。

『大丈夫？』


私はポツリと答えた。
『大丈夫。』


本当は大丈夫じゃないけれど、絶対夏樹の手なんて触りたくもなかった。
夏樹は先に家の中に入って行った。
私はゆっくり入って行った。



ナーちゃんと駿はまだ寝ていた。



吐き気がした。