Je te aime ~愛しき人よ永遠に~
岐路
私は文に文の前から皆の前から姿を消した。
その後、私は全く彼等とは関わりの無い人と結婚をし、女の子を産んだ。
その子を連れて1度だけ文の家に行くと、文は変わらず私を迎えてくれた。
嬉しかった。
文も結婚をし、奥さんのお腹の中には新しい命が生まれていた。
懐かしい文の家に入れてもらい、文の結婚式の写真を見せてもらった。
写真の中の文は笑顔を沢山見せていた。
嬉しかった。
心から嬉しかった。
文に聞いた。
『今。幸せ?』
文は優しく笑い答えた。
『うん。そうだね。』
嬉しかった。
嗚呼、私のした事が報われた。
それだけで良い。
充分だ。
夕日を背に文に
『じゃあ、またね。』と
言って私は駅に向かった。
これで良かったんだ。
やっと幸せになれたんだ。
夕日で長くなった影が涙でボヤけた。
大丈夫。
駅に着く頃には涙は収まるだろう。
それ以降
私が再び文の声を聞いたのは随分後になる事になる。
その間に私達の運命は、時の悪戯に弄ばれることも知らずに。