スケッチブックに描くもの
「ここチョコついてる」

 佐伯君は私の頬からそして唇へ指先を滑らす。私すっかり凍りついていた。
 もしかして私騙されてるの? あの無愛想な佐伯君が。ああ、ありえない!? 夢? 夢かも?

「鏡野?」
「あ、うん」

 夢ではなかった。手は離れたんで、ようやく動ける。無駄に飲み物飲んでいるけど。ああ、どうしよう。

「なあ、何でテニス部で絵を描いてるの?」
「あ、あれは。その」
「てっきり、あれで部長のこと好きなんだと、思ってた」
「え!?」

 何か誤解が誤解を生んでいる?

「鏡野僕が行く前にもうすでにそこにいたから」
「あれはあなたに、佐伯君に会うためにしたの。はじめて会った日に追いかけたんだけど見失っちゃって。テニスラケット背負ってるし、学校の制服だったから、テニス部にいれば会えると思ったの」

 うう、恥ずかしい告白。
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