スケッチブックに描くもの

「鏡野がテニス部来てるのは僕に会うためにか」

 あの、心の中で言ってよ。そういう言葉は! 恥ずかしいよ。

「地学がないクラスにわざわざ借りにきた人が言う?」
「鏡野って自覚ないんだな?」
「なんの?」
「いや、いいよ。わかってないなら」

 何のこと? と聞こうとしてスッと背中に腕を回されて言葉がでない。な、どういう展開?
 ドキドキの止まらない私に佐伯君は告げる。

「じゃあ、僕と付き合って」

 う、顔がー。耳元でそう言う言葉。いつもと性格違うってば。

「ダメ?」

 佐伯君が体の向きを変えようとする。私の顔を見ようと……

「あ、はい。わかった」

 思わず抱きついてその動きを阻止して、返事を返す。

「じゃあ、これからはアリスって呼ぶから」
「え? あ、うん」
「じゃあ、僕も涼って」
「うん。涼」

 う、この急展開。桜の神様ありがとう! そんな神様聞いたことないけど。
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