スケッチブックに描くもの
 さっきから気になってたんだけど。涼は私の真横にいる。で、話ながら歩いてるんだけど…なんで同じ方角?

「あのさあ、方角あってるの? 送ってくれてるの?」

 送ってくれてるにしては曲がり角に迷いがない。

「ああ、方向一緒だよ。何度か後ろ帰ってたから」

 あ、テニス部が終わるまで私もいる。涼の足なら余裕で私に追いつく。って、

「なんで追いついたのに声もかけずに後ろにいるのよ!」
「あ、ごめん。だから、部長だって思ってたから、声かけづらいよ」
「じゃあ、なんで今日は? あんな手の混んだ事までして」
「朝、朝だよ。声をはじめてかけてくれたし、肩に触れたろ?」

 あ、思い出した。通り過ぎる時に彼に声をかけたとわかるように、肩をポンと触った。いや、触れたかったのかも、そばまで行ったから勢いで触ったんだ。

「あれで?」
「ああ。まあ自信があった訳じゃないけど、お弁当持ってただけで、一緒にお弁当持ってきてくれたし、屋上で一緒に食べるのも何も言わなかったから、これはいけるかもって思って」

 素直について行ったけど、そういえば彼以外の人に同じことされてもついては行かない。

「この!策略家!」
「まあ、アリスから抱きついてくれるとまでは思ってなかったけど」
「あ、あれは」

 顔が接近するのを防ぐ為だったけど。もちろん誰か他の人ならしない。

「ねえ、テニス中学からやってたんだよね?」

 恥ずかしいので話を変えてみた。
< 25 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop