スケッチブックに描くもの
 朝、今日は何とか間に合いそう。
 門を通過し癖でテニスコートを見る。何人か朝練が終わったんだろう、コートから出てくる。
 ん、どうしよう? 涼はもう行ってしまったのかもしれない、待っててもな……戸惑ってると佐々木部長が見えた。最後なんだろう鍵をかけてる。私は涼がいないことがわかってホッとして、歩き出した。

「おい、鏡野」

 佐々木部長にあっという間に並ばれる。

「はい?」
「お前佐伯と付き合うことはどうこう言わないが、他の部員の気が散るようなことはするなよ」

 ようはいちゃつくなって事だな。しないし、そんな恥ずかしい事!!

「しないです。描き終われば美術部に戻りますから」

 まだ、描く絵の下絵すら出来てないんだけどね。
 出来上がったら……ああ、そうなると寂しいなあ。

「鏡野、もしかして親善試合もくる気か?」

 あ、そんなこと考えてもいなかったけど、白熱した試合なら見たい! それに涼も出るし!

「行ってもいいんですか?」
「他の学生も応援にくるからな。お前だけを止める理由がない。絵を描きにか?」
「え!? あ、はい」

 あ、涼の応援の方か!?

「コートに近い方がいいんなだよな?」
「あ、ええ。できれば」
「わかった」

 と、言い置いて佐々木先輩はスタスタと先に行ってしまった。
 優しいのかなんなのか不思議な人。
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