スケッチブックに描くもの
「にしては、とか言うな」
「だって最長何日」
「5」

 小声で言ったのに莉子は聞き逃さない。

「5日だよー! しかも、触られてもいいって。さっきもねえ」
「触られてもって、その言い方!」
「はいはい。手をつなごうとした、肩を抱こうとした、腕を組もうと言われた。って理由で別れてるじゃない!」

 そう。そうなんだよね。まあ、付き合ってもいいかと思うんだけど、実際そういう場面になるとそれは無理ってなっちゃて、結局別れている。

「そうなんだけど」
「最初に抱き合ってたって聞いて情報が大げさだと思ったんだけど、今も逃げる様子も嫌がる様子もなし。ましてや少し喜んでるし。私の知ってたアリスはどこ? どこいったの?」
「莉子芝居が入り過ぎ」
「まあ、良かったよ。もう男性不信になってんじゃないかって心配したんだから」

 と、いいながら莉子は私の肩をバンバン叩く。痛いって。

「はい。ご心配かけました。男性不信になってません。ってか、なってたら男子テニス部に絵を描きに行くわけないでしょ?」


 キーンコーンカーンコーン

「じゃあ」

 と、とっとと自分の席に帰る莉子。まあ、いいか。心配はしてくれてたみたいだし。


 テニス部に行くといつもより気合が入ってる部長がいた。私への視線も痛いです。

「親善試合まで明後日で一週間だ。今まで以上に気合いれてけ!」
「はい」

 みんなに檄をとばしいつも以上に緊迫した練習です。
 毎日のハードな練習もお父さんのとは比べられない程なのか、それとも仲間がいるからか涼は楽しそうだけどね。
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