スケッチブックに描くもの
 やばい!がばっと起きた私。寝坊した!!! 昨日自分は試合に出ないのにやたらと緊張して眠れなかった。
 急いで着替える。え? 制服? 応援だしいいか。スケッチブックとお弁当と水筒、ああ、時間が。
 慌てて外に飛びだし、ああ、場所の地図!! もう一度家に入り部屋に戻る。


 息を切らして試合会場を探す。やっとみつけた。あ、あれ?もう試合ははじまっているが、コートにも控えの場所にも応援席にも涼の姿はない。え? どこ? 会場内をぐるっとまわってやっとみつけた。木陰で寝転んでいる涼を。なにしてんのよ。
 近づいて行くと女の子が見えた。涼に何か話かけてる。私はクルッと回って涼に背を向ける。どうしよう感じたことのないこの胸の痛みと熱く燃える気持ち。嫉妬か。ただ話かけてるだけなのに。私って嫉妬深い性格なんだな。あの制服ってどっかの女子高だったような。今日は女子も試合なのかな。
 フーッと息を吐いて気持ちを持ち直す。クルッと振り返り涼の元に向かう。さっきは帽子でよく見えなかったけど、やっぱり涼だった。その子と話す為に起き上がったみたいだった。

「涼!」

 声をかける。女の子に早く離れて欲しくて。

「アリス!遅いよ!」

 女の子は何か行って去って行った。

「寝坊しちゃって。なんで試合会場にいないのよ?」
「控え、補欠なんだよ。順当にいけば出番なし。何かやる気なくなって」
「怒られるよ。試合応援しないと」
「アリスもこないし」

 チラリと見ていう。遅れた私が説教してどうかと思うけど。

「佐々木部長に絶対怒られるよ。そんな拗ねた子供みたいなことせずに行こう。ね」

 手を差し出す。涼はその手を取りひっぱる。

「あ」

 当然私が引っ張られて転ぶ。私は涼に乗りかかるかたちになる。

「もう」
「さっき、嫉妬して声かけたの? こっち見てから向こう向いてた」

 ああ、さっきの私を涼に全部見られてた。

「あ……うん。どうしようか考えてたの。知り合い?」
「さあ、向こうは俺のこと知ってたみたい。頑張ってとか言われて。今日試合するかわかんないから返事に困ってたんだ」

 何? ファン? 中学の同級生かな?

「アリス走ってきた? 汗だく!」

 涼は私の背中を触ってくる! もう!
 私は体制を整えて座って涼にもう一度言う。

「試合観に行くよ!」
「じゃあ、嫉妬してた?」
「してた。ほら、行くよ」

 今度は腕を取り引き上げる。

「わかったよ」
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