スケッチブックに描くもの
 午後試合開始して、すぐに莉子の噂と私の分析は当たったとわかった。
 相手は強かった。当たったと言ったがそれ以上だった。惨敗だった。

 私はうなだれる部員たちの中、部長に帽子を返すタイミングがつかめずにいた。

「今日の試合でわかったと思う。帝流学園は強い。今日の相手をイメージしてもっと上に行ってくれ。他の部員もだ。また試合前にレギュラー争奪戦を行う。まずはそこにはいあがれ。以上だ」

 気合をみんなにいれた佐々木部長がいた。勝てたのは佐々木部長ともう一人の駿河さんだけだった。
 多分思っていたよりも惨敗だったんだろう。
 私はそっと佐々木部長に帽子を差し出す。

「ありがとうございました」

 佐々木部長は帽子を受け取り私の頭をクシャっとする。言葉がもう出ないんだろう。


 帰りの電車みんな無言だった。もう涙を流すものはいないがやはり、まだ引きずっている。
 あんなに陽気な人達がこうなるって、それだけ真剣で、そして本気で挑んだんだ。
 私は胸のスケッチブックを握り締める。ここにはみんなの努力の跡がある。まだ上にいけるはず、そうまだはじまりなんだから。
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