スケッチブックに描くもの
 夏休みに入ってすぐに私の絵は完成した。あーどうしよう。涼とこのままここにいる時間を過ごしたかった。でも、わがままだよね。ルール無視でここにいるんだから。

 後ろで気配がする。

「何だ鏡野これじゃあ、テニスの良さが全く伝わらないじゃないか。ここにずっと居座っておいて」
「あ、はい。すみません。佐々木先輩」

 まさかの佐々木部長から絵のダメ出し。あー最悪だ。

「これじゃあ困る。もう一枚描け!」
「え!?」

 ここに私がいるのあんなに迷惑そうだったのに? っていうか小突かれた。

「テニス部がこんなだと思われたら困る」
「はい。次は頑張ります」

 なんだろめちゃくちゃ絵を批判されたけど、結果オーライ?


 取り敢えず顧問に見せに行くと

「よく描けてるじゃないか。頑張ったな」
「あのそれが、テニス部からクレームが来て……これじゃあ困るって」
「そうか、いい絵だが。まあ、もっと迫力とか欲しいんじゃないか。頑張ってるからなテニス部」
「なのでもう少し描いてみます」
「ああ、そうだな。上達してるし、もっと迫力ある絵がかけるといいな」

 顧問は相変わらずポジティブだなー。


「えー。あの絵俺気に入ってたのに。佐々木部長なんの部長だよ」

 確かに何部ですか? だけど。

「でも、これで夏休みもテニスコート入れるし大会とかも全部!!」

 そう試合観には行けるけどあの席は用意されてないんだ。
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