桜と散る恋
つい最近まで平凡で幸せだった私の暮らしは、音をたてて一瞬にして崩れた。
父親は私が生まれる前に家を出ていったらしいから、顔すらしらない。
母は、私を一生懸命育ててくれた。
だが、あの日………
「買い物行ってくるね、桜。」
「はーい!いつ頃帰ってくるの?」
「すぐそこだから、そんなに遅くはならないよ。」
その一言を残して、彼女は帰ってこなかった。
最初のうちは、あのマイペースな母親の事だから、何処かで油でもうっているのだろうと思ったが、流石に夜になっても帰ってこないのには違和感を覚えて、探しにいった。
…見つけたのは、容赦なく斬りつけられた無惨な死体だった。
ほんの数時間前まで生きていた母親は、もう、ほとんど誰だかわからない。
けど、服と髪型は確実に母親で、私は悲しさよりも恐怖と吐き気に襲われた。