桜と散る恋


「……!」


後ろから人の気配、しかも夥しい殺気を感じた。


どうやら私もここまでらしい。





その気配は段々と近づいてくるが、あえて私は動かなかった。




「お母さん、もうすぐ会えるね。」



そう心で呟いた瞬間、血の臭いと生暖かい液体に包まれる。





「グハッ!!」



だが、その声をあげたのは私ではなかった。



「??」


「__怪我はないか?」



「…はい。」


目の前には、浅葱色の羽織で身を包んだ青年が立っていた。


(この格好、……壬生狼?)



そして、もう動かない私を襲った辻斬りに目をやった。



私の脳裏に、母親の最後がよみがえる。






強い吐き気ともやもやした気持ちに襲われ、私はその場に倒れ込んだ。



「…おい、お前!しっかりしろ!」



そんな声が微かに聞こえた。
< 4 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop