桜と散る恋
「……!」
後ろから人の気配、しかも夥しい殺気を感じた。
どうやら私もここまでらしい。
その気配は段々と近づいてくるが、あえて私は動かなかった。
「お母さん、もうすぐ会えるね。」
そう心で呟いた瞬間、血の臭いと生暖かい液体に包まれる。
「グハッ!!」
だが、その声をあげたのは私ではなかった。
「??」
「__怪我はないか?」
「…はい。」
目の前には、浅葱色の羽織で身を包んだ青年が立っていた。
(この格好、……壬生狼?)
そして、もう動かない私を襲った辻斬りに目をやった。
私の脳裏に、母親の最後がよみがえる。
強い吐き気ともやもやした気持ちに襲われ、私はその場に倒れ込んだ。
「…おい、お前!しっかりしろ!」
そんな声が微かに聞こえた。