桜と散る恋

私は、ここ数日のことを全て彼に話した。


「そうか……」


そして彼は難しそうな表情をする。



「…近藤局長に取り入れば、ここの女中ぐらいにはなれるかもしれん。」


彼の口から出た言葉は意外なものだった。

「本当ですか?!」


「まぁ、可能性は低いがな…」



やっぱり、そんな簡単に仕事が見つかるわけないか……


でも、とりあえず折角のチャンス、無駄にはしたくなかった。



「局長さんというかたはどちらに…?」


「ついてこい。」



私は布団から起き上がろうとした。


だが、


「わっ?!」


食べ物をほとんどとっていないせいか、力が入らず立てない。



「…そんな風になるまで食べないとは…まったく、何があっても命は無駄にしていいものではない。まぁ、俺が言えたことではないが。」


彼は一瞬悲しそうな顔になり、それから懐に入っていた饅頭をくれた。


「あ、ありがとうございます!」


私はそれを一口で飲み込んだ。


「食い意地のはった女だな…」


不意にそんなことばをかけられて、私はハッとした。


「ち、違います!」
< 6 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop