意地悪なキミの好きな人
「ーー野原?」
先輩の一言で現実に引き戻される。
「わ、すみません。自分の中で回想に入ってました。」
「なんだそれ。」
そう言って先輩は私に笑顔を向ける。
だけどそれはただの後輩として送られてきた笑顔。
あたりまえだけど私には先輩を優しい笑顔にさせることは無理だ。
「まぁいいけど。それよりこれ解いて。」
やばい、かなりやばい。
問題を解く私とそれをのぞきこむようにして見る先輩。
きょ、距離が……近い……。
あと数センチでぶつかってしまいそうだ。
「そう、あってるからそのまま……」
至近距離で言われ、ドキドキする。
先輩、無駄に女の子をドキドキさせたらいけないと思います。
ドキドキと収まらない鼓動を感じながらそう思う。