だから俺と、付き合ってください。



なんてことを考えていたら降りるべき駅に到着して、清瀬くんと二人で改札を抜けた。


そしてまた何気ない話をしていた時に、目に飛び込んで来た人物に心臓が跳ね上がる。


ーードクンッ……。



「おはよ、綾乃」



そう言って微笑むのは……。



「修二、先輩……」



ザワザワした駅前の道。


同じ学校の生徒や、出勤中のサラリーマンがそれぞれ歩いているなか。


先輩が電柱に寄りかかるようにして、手をポケットに入れて立っていた。


うそ……なんで……。


微笑む先輩に、私は、うまく笑えない。


会いたかった先輩に、会えたのに。



「あ……じゃあ俺先に行くな?」



清瀬くんが私の視線の先にいる先輩に気づいてそう言ってくれて。


先輩に頭を下げてから清瀬くんは先に行ってしまった。


数回まばたきを繰り返すと止めていた歩みを先輩に向けた。



「先輩、なんで……?」


「ん?一緒に学校に行こうと思って」



そう、なんだ……。



< 75 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop