生きることの意味【完結・加筆完了】
「規模はちっちゃいけど、めっちゃ内容凝ってて俺、すっげえ楽しみにしてるんだよ」
「そうなの?」
「そのイベント限定のオリジナル商品と、秋冬のコレクションを着て、ショーするんだけどカッコいいんだ」
「よっぽど楽しみにしてるんだね、緋人。凄く嬉しそう」
「うん。デザインちらっと見せて貰ったんだけど、すっげえカッコよかったし。
どうやって歩こうかなとか、色々考えてるし」
「じゃあ、来週あたしも行くよ」
「ほんと!?杏奈来るってわかったら、俺余計気合い入っちゃうよ」
「はは。簡単だな」
本当に嬉しそうにしてる緋人を見て、あたしにも自然と笑みが零れる。
明日、一緒に登校する約束と、来週のショーを見に行く約束。
それだけで、生きる希望があると思った。
毎日に絶望しかないと思っていたあたしが、生きたいと思う理由に緋人がなってくれている。
もう、死にたいなんて思わないけど。
それでも、緋人がその理由を作ってくれている事が嬉しかった。
きっと、緋人は無意識なのだろうけど。
それから牛丼屋を後にすると、並んで駅まで向かった。
女子高生が通り過ぎる度に、緋人に気付き振り返っていく。
微かに聞こえてくる言葉は、緋人本人かを確認する様な事ばかり。
マンションの屋上で会った時は、こんなに凄い人だなんて思ってなかったのにな。