生きることの意味【完結・加筆完了】
それから電車が来ると、あたし達はそれに乗り込む。
少しだけ混んでる車内。扉側にあたしを立たせて、その前に緋人が立った。
「杏奈って髪の毛サラサラだよなー」
あたしの髪の毛を一束手にとりながら、そう感心する様に呟く。
意識はどうしたってその毛先にいってしまって、それを振り払いながら答えた。
「手入れしてるからね」
「ふうん。俺、この色だから結構ギシギシ」
「だろうね」
「杏奈は染めたりしない方がいいな」
「あたしもあんま染める気ないかな」
あたしは黒髪ストレートのミディアムヘア。
重たくならない様に、すいてもらって軽くしてはいる。
手入れと言ってもそんな細かくしてるわけじゃない。
悪いと言われる事はしない様にしてるだけ。
濡れた髪のまま寝るとか、そんな事。
この髪の毛を褒められた事は素直に嬉しかった。