生きることの意味【完結・加筆完了】


「今日ね、俺ちょっと髪の毛気合い入れちゃった」

「……髪の毛?」


電車に乗り込むと、緋人はドヤ顔でそう言った。
あたしに髪の毛を披露してるけど、えっと、あの。正直言ってどこが昨日と違うのかわかんない。


さらっとしてる緋人の髪の毛は、相変わらず緋色だったし。
ポカンとしたまま、緋人の顔を見つめるあたしに気付いた緋人はまた拗ねた。


「どうせ、杏奈は俺に興味ないよ。知ってたから、別に」

「ちょ、ちょっと」

「昨日はストレートだったけど、今日はちょっと後ろに流してみたの」

「……」


わっかんねえよ。
そんなの。

それを知った後で見てみても、実際昨日との違いなんてわからない。



「杏奈の学校行くし、少しでもカッコよく見せたかったからさ」


そう言って、ぷいっと顔を背けた緋人の頬は心なしか赤い。
本当に緋人はあたしの事を想ってくれてるんだな。



それに、心が温かくなる。

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