生きることの意味【完結・加筆完了】

「今日はこれだけ言いたかったんだよね。
んじゃ、杏奈行こうか」

「え?あ、うん」



三人は口を噤んで、俯いている。
何も言い返せないようだ。



その姿を見て。

少しだけ、気分がよかった。


あたしの今までの苦しみを考えたら、こんなの軽い。
これぐらいで死にたいなんて思わないでしょ。


あたしは死にたかったんだ。
もう、生きてなんていたくなかったんだから。



「驚かせてごめんな」



歩き出した緋人は突然謝って来る。



「何が?」

「さっきの。驚いたろ」

「いや、まあちょっとだけ」

「だよな。けど、俺杏奈を虐めたヤツに会ったら最初から言う予定だったんだよね」

「そうなの?」

「そうそう。俺と付き合ってたって事実は、羨望とかもあるかもしれないけど、確実に嫉妬も含まれるしね。
その相手が杏奈と知られたら、更に虐められてもおかしくないって思ってさ」

「……そんな事まで考えてくれてたんだ」



あたし、何も考えてなかった。
その嫉妬程、怖い物はない。

身を持って知ってた筈なのにな。
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