生きることの意味【完結・加筆完了】
「早くー。杏奈おいでよー」
さっき、悲しそうな顔で自嘲した緋人はもういない。
あたしはおずおずとその足を一歩ずつ前へと踏み出して行く。
1LDK。高校生の一人暮らしにしては、広いし、綺麗だ。
まあ、思ってたよりも部屋が散らかってて、ホッとしたけど。
やっぱり緋人も普通の男子高校生なのか。そう、思えた。
「映画見よ。俺、見たいのあるんだよね」
「映画?」
「あ。腹は?何か出前でも頼む?」
「空いてない」
「そう?じゃあ、杏奈はデザートでも頼んで」
緋人が空いてるのか。
そう言うと、緋人はメニューをあたしに手渡す。
ピザ、か。
あたしはメインのピザには一切目もくれず、裏面のデザートを見る。
……やっぱりこれかな。
「バニラアイス」
「杏奈はアイス好きだな」
「うん、好き」
「俺は俺はー」
「嫌いじゃない」
「何、その微妙な答え」
リモコンを手にしながら、緋人があたしに呆れた顔を見せた。
ぴぴっとボタンを押して緋人は何やらセットしている。
それから、ネットでピザを注文していた。