生きることの意味【完結・加筆完了】
「……あ。えっと、ごめん。触りたくなって」
「そういう事されると、理性が切れるんだけど」
「え?ちょ、っと」
髪の毛を触っていた手をぎゅうっと掴まれる。
それから、急に腕を引っ張られたあたしはバランスを崩して緋人の体に倒れ込む形になった。
「杏奈って無防備なんだか、警戒してんだかわかんない」
耳元で囁かれて、緋人の吐息があたしの耳を掠める。
それだけで一気に頬に熱が集まっていくのがわかった。
「何もしないって決めてたんだけど…」
「だ、ダメです!!」
「ダメって言われても、こんな杏奈近いし」
近いって。それは緋人が引っ張ったからでしょーが!!
キス、されるのだろうか。
あたしは思わず、きゅっと目を瞑った。
だけど、キスの代わりに聞こえたのは緋人の声だった。
「……なんてね」