生きることの意味【完結・加筆完了】

「これ、公開されてからずっと見たかったんだけど行く暇なくてさ。
DVD貰ったから杏奈と見ようと思って」

「そうだったんだ」

「今度さ、これの…」


そこまで言ったところで、緋人の携帯が着信を知らせた。
軽く顔を顰めると緋人はあたしに一言謝ってから電話に出る。



「……何ですかー。京香さん」


あ。相手は京香さんなのか。
あたしは口を結んだまま、緋人をじっと見つめる。



「ええ。俺今日オフじゃん?……あー。うん、確かに言ったけど。
え。まじ。でも、俺杏奈と一緒にいるから今日は嫌だ。別の日に出来ないの?」


そう言った瞬間、あたしにも聞こえる程の怒号が緋人の携帯から聞こえて来た。
何て言ってるかまでは流石にわからなかったけど。



「はあ…わかりましたー。今から行くよ」



どうやら折れたのは緋人の様だった。
通話中、終始眉間に皺が寄っていて明らかに不満そうだ。


通話を終えた後、緋人が申し訳なさそうに口を開く。
< 190 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop