生きることの意味【完結・加筆完了】
「実物の方がいいね、サトルさん」
あたしは思った事を素直に口にする。
屈託ない笑顔。とってもカッコよかったし、モデルってのも納得。
「……本当に、杏奈気を付けてよ?」
「うん。でも、サトルさん、変な事しそうにないけどなあ」
そう言うと、緋人は足を止めてあたしを見下ろした。
その目があまりにも冷たくて、初めて見る怖い瞳にゾクリとした。
「絶対一人になるなよ。これはお願いじゃない。命令」
「……わかった」
緋人の迫力に、あたしはそうやって頷く事しか出来ない。
何でこんなに頑なにサトルさんと二人になる事を恐れるんだろう。
あたしはずっとスタジオにいるつもりだし、そんな時間は絶対に訪れないと思うんだけど。
緋人はあたしの手をぎゅうっと痛いぐらいに強く握ると、事務所の中へと足を踏み入れた。
「おはようございまーす」
明るい緋人の声が事務所に響く。
それに中にいた人達が顔を上げて緋人を見た。