生きることの意味【完結・加筆完了】
サトルさんはあたしを見ると、ニッコリとまた人懐っこい笑顔を見せて手を振った。
曖昧に笑いながらあたしはただぺこりと頭を下げるだけだった。
撮影が開始されると、スタジオの空気ががらりと変わったのを感じる。
やっぱり皆“プロ”なんだ。
それを肌で感じながら、あたしはセットの上に立つ緋人をじっと見つめた。
ブラックのロングスタンドカラーコート。
それにブラックのマフラー。
チャコールグレーのニットに細かな千鳥格子のスリムパンツ。
だけど、真っ赤な革の靴が鮮やかにその存在を主張していた。
髪の色と同じ。鮮やかな緋色。
その隣に並ぶのは、サトルさんだ。