生きることの意味【完結・加筆完了】
「髪の毛もやってもらったんだ。
いいじゃん。おでこ出した方が絶対に可愛い」
「えっと、あの」
「染めたりしないの?茶色の方がきっと、俺の好み」
「いや、染める気はないですから」
「ええ?勿体ないなー」
緋人が目の前にいて、さっきあんな風に牽制されたというのに、この人は全く気にしていないらしい。
こっちがハラハラしてしまうよ。
緋人は眉間に皺を寄せて、とっても怖い顔をしてるし。
すると、突然緋人があたしの手を引っ張って後ろに隠す。
それから少しだけ微笑む。
「杏奈、もう行こうか。……サトルさん、お疲れ様でした」
「もう行っちゃうの?俺、もっと杏奈ちゃんと喋りたいのに」
「……、俺の彼女ですから。これからは二人の時間なんで」
「ざんねーん。あ。杏奈ちゃん、また話そうね?バイバーイ」
心底残念そうな声を出した後、屈託のない笑顔であたしを見ると手を振るサトルさん。
それに一度ぺこりと頭を下げた。