生きることの意味【完結・加筆完了】

緋人には毎日会っていた。
会っていたといっても、どっか行くわけじゃなくて、ホームで会って家まで送ってもらうだけだったけども。

サトルさんとの撮影の時に見せた様な弱弱しい姿を、あの日以降微塵も感じなかったからあたしも気にせずにいた。


やっぱり香奈が来ていなくて昼休みにあたしは緋人にそれを打ち明けた。


すると、今日会ってちょっと話しようか。って緋人が言ってくれてから、あたしもそれに乗った。
何か出来ると思ってないし、何かしたいとかも思ってない。


あたしは確かに香奈にされた事で傷付いたのだから。


だけど、それでもやっぱり見捨てきれない自分がいて苦笑してしまう。
偽善も大概にしろって話だよね。



放課後、前田さん達に別れを告げると、急いで外へと向かった。


校門を潜って早歩きで駅まで向かう途中。
……彩加と南津子を見付けた。


二人は楽しそうに会話をしている。
あたしはその二人を無言で追い越した。


そんなあたしに気付いた南津子の声が背中から聞こえた。


「あーあ。誰かさんの代わりにアイツ、可哀想」


一瞬、何の事を言ってるのかが分からなかった。


「ぷっ、南津子、それは言っちゃダメ」


楽しそうな彩加の声もする。
あたしはぴたりと足を止めると、くるっと振り返って二人の顔を真正面から見つめた。
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