生きることの意味【完結・加筆完了】


「実は、杏奈の住んでるマンションに俺の友達が住んでてよく行ってたわけ。
今は住んでないんだけどね?そこで杏奈を見たわけ」

「本当に?」

「うん。そっから電車で見かける様になって、密かにストーカーしてた」

「……」

「まあ、俺は俺できっかけとか掴めないし。
他に色々女作ったりしてたけど、ずっと杏奈の事は頭の片隅にあったかな。
でも、いつからかな。杏奈が一人で電車に乗る様になって、誰かと笑う姿を見なくなったどころか…。
凄い暗い顔してたのを見つけてさ」

「……」

「モデルの仕事とかで忙しかったから、たまにしか見かけなかったけど心配してたんだよ。
次にあのマンションで会ったら、話しかけよう。
そう、心に決めて。それがあの日だったわけだけども」

「……あの時、そんな素振り、なかったじゃん」

「言ったでしょ?死ぬな、なんてありきたりな言葉。杏奈の心には残らないと思ったって」

「俳優とかになれるよ、緋人」

「そうかな?そんな仕事が来たら受けようかな。俺」

「調子乗んな、もう」

「フェンスに上ろうとしてる杏奈を見て、まじで心臓止まるかと思ったんだからな」

「も、もうしません」


< 314 / 332 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop