生きることの意味【完結・加筆完了】
理由なんかわかんない。
でも、杏奈ちゃんが緋人と楽しそうに話してると、無性に腹が立った。
そのベクトルが緋人なのか、それとも杏奈ちゃんに向けてなのかすらわからなかった。
だから、とりあえず緋人に嫌がらせしておいたけども。
わざと、にっがーいコーヒー飲ませたりね。
二十歳にもなってくだらないけども。
初めて緋人を見た時の衝撃は、きっと一生忘れない。
珍しく大物スカウトしたって、桜井さんがはしゃいでたっけ。
だから、俺もその人物に興味はあった。
でも、一目見た瞬間。
……あ、持ってかれるって思った。
俺の今の立ち位置なんて、こいつには関係ない。
そう、思った。
だけど、そう思ったのは俺だけだったみたいで、他のモデル仲間は大して緋人を気にしていなかった。
だからこそ、緋人がモデルデビューしてすぐに表紙を飾った時は周りの嫉妬が凄かった。
緋人が撮影中に見せるあの、鋭い瞳が俺を縛り付ける。
まるでヘビに睨まれたカエルの様だ。
緋人と一緒にいればいる程、俺がちっぽけな存在に感じた。
そんな時だった。
緋人の彼女に声をかけられたのは。