生きることの意味【完結・加筆完了】
「少しだけ歩くよ」
「うん」
改札を抜けても緋人の手は、離れない。
じんわりと熱くなるその手の平に、意識がどうしたって集中してしまう。
何でこの男はこんなに平然としてるんだよ。
こっちは手を繋ぐ事だって、照れて恥ずかしいと思うのに。
涼しい顔をしてる緋人を後ろからキッと睨みつけた。
もちろん、そんなあたしの視線には気付いていないのだけど。
「つーいた」
迷路みたいに、裏道細道を歩いて曲がったりして辿り着いた場所。
そこはどうやら、緋人がモデルを務める雑誌の編集部らしい。
雑誌ANNEと書いてる。
え。他にNOISEって書いてある。
NOISEこと、ノイズは私も読んだりするファッション雑誌だ。
ここだったんだ。
モデルとかに会えたりするかな。
少しだけ、気持ちが浮き立つ。
緋人に連れられるまま、あたしはそのビルに入って行く。
エレベーターに乗ると編集部のある5階のボタンを押して、緋人は壁に寄りかかった。
「緊張する?」
何も言わないあたしに気付いた緋人は、ふって笑ってそう言った。
素直に頷くと、緋人は「そうだよな」ってまた笑った。