生きることの意味【完結・加筆完了】
「大丈夫。編集長は面白い人だけど、優しいよ」
「うん」
「それに、俺がいるから」
「うん」
「何だ、いやに素直だな」
「だって、緋人しか知らないし」
「まあな」
つか、緋人の事もろくに知らないんだ。あたし。
チーンと音を鳴らしながら、5階に到着してエレベーターの扉が開く。
綺麗な廊下を歩いて行くと、目立つ箇所に緋人のポスターが貼ってあって思わず目を止めた。
ボルドーのシャツから覗く肌。
静かに佇むシルバーネックレス。
右側から光が照らされていて、こちらを射抜く様な双眸にドキリとする。
今、あたしの横にいる人と同一人物には思えない。
モデルの緋人って、こういう感じなんだ。
初めて知る緋人のモデルとしての部分。
「おはようございまーす!」
そんなあたしを無視して、緋人が編集部の扉を開ける。
元気な声も付けて。