不純な理由で近づきました。
チャイムの音と同時に休み時間になった。
チラリと一ノ宮くんの方を見れば、比較的人は少ない。
行くなら、今しかない。
わたしが席を立ったときに枢くんが一ノ宮くんのところに行き、女の子が名残惜しそうに散っていく。
ますます好都合だ。
わたしは柄にもなく緊張しながら「あの、」と話しかけた。
整った顔が向けられて一瞬戸惑う。
いや、躊躇ってたりする場合じゃない。
頑張れわたし、と自分を叱咤。
「あの、昨日はありがとうございました」
ペコリと頭を下げれば枢くんが「あぁ、ノートの」と言って。
一応覚えてもらえていてよかった。
忘れられていたら恥ずかしいことこの上なかったよ。
「いいよいいよ、ぶつかったのはお互い様だし。ね、恭?」
「あぁ」
うわ、なんて心震えるセクシーボイス。
思わず録音したい衝動に駆られるけどここは我慢した。
そんなことをしたら確実に変人扱いされる。
「それで、その、今日のお昼休みって時間ありますか?」
いきなりのわたしの発言に、枢くんの目は丸くなり、一ノ宮くんは訝しげに眉をひそめた。