不純な理由で近づきました。
「む、無理とかじゃなくてね。
恭くんは大丈夫だから、カインくんも平気かなって思って」
だからそのお姉さんたちも大丈夫だろう、なんて思ったのだけど。
ちょっと、怖い気持ちはそれはある。
でも、いつまでもこんなことで怖がるなんて嫌なの。
ちゃんと、辛い過去とだって向き合って強くなりたい。
「だから、手……大丈夫。外して下さい」
「……分かった」
はぁ、というため息が耳に届く。
少し、我が儘だったかもしれない。
恭くんはわたしを心配してこそいろいろ言ってくれたのに……呆れられたかな。
「でも、怖くなったらすぐ言えよ」
「はいです」
真剣に心配してくれる声。
呆れていないみたいで少し嬉しくなってしまう。
そっと視界を塞いでいた温もりが消えて、光が目に入った。
ドキドキと、緊張で忙しなく動く心臓。
やっぱりちょっと怖くて、思わず恭くんの服の裾を掴んでしまった。
でも、あのときみたいに心の中全てが恐怖で染まっているわけではない。
「大丈夫か?」
心配そうに顔を覗いてくる恭くん
その瞳を見つめてわたしは頷いた。
「あのー、二人の世界に入ってるとこ悪いんだけど、」
あ、とカインくんの言葉に固まる恭くんとわたし。
「この状況、説明してくれると助かるかなー……なんて」
………で、ですよねー。
と、わたしは思わず苦笑をもらした。