不純な理由で近づきました。




「……あっ」



いきなりの声にみんなの視線がわたしに集まる。


でも今はそれどころじゃなくて。



「ゆ、ユスラさん。
もしかして、ユスラさんの着ている服って、『Sweet dream』……?」


「? そうですよ」



や、やっぱり!!



「じゃあ、今付けてる香水も、」


「気づきましたか?
Sweet dream限定五十個の香水です。
苦労して手に入れたんですよ」



ユスラさんから香った、甘いラベンダーに近い香水。


わたしも、つい最近匂いを嗅いだ。


どうして気がつかなかったのか……自分で自分が信じられない。


記憶力の低下も甚だしい。



「意外ですね。六花さんってこういう服に興味ないかと」


「……うん。でもSweet dreamだけは別です」



首を傾げるユスラさんに、わたしは笑みを見せた。



「Sweet dreamは、わたしの兄さんのブランドだから」



そりゃ服も見たことあるわけだ。


なんたって、兄さんが作った服なんだから。


ついでに言うと、香水も兄さんとナルちゃんを中心に作ったって前に聞いた。


わたしもなんだかんだでアドバイスを与えて。


完成したものは特別に、と一つ兄さんたちにもらった。



あぁ、それなのに気がつかなかったなんて。


どんだけわたしは薄情なんだ、と呆れてしまう。






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