不純な理由で近づきました。
「仕方ない……ユスラ、六花から離れろ。
六花のケータイ鳴ってるから」
ポンポン、と恭くんが肩を叩けば、ユルユルと腕の力が抜けて。
ちょっとだけ目を赤くしたユスラさんが恥ずかしそうにわたしを見た。
「すみません。ぼく……」
「ううん、大丈夫ですよ」
体を起こして、気にしないで下さいと微笑む。
「六花、ケータイ」
「あ、ありがとです」
恭くんから渡されたわたしのケータイ。
とりあえず、切れる前に出ないと、とディスプレイも見ずに通話ボタンを押す。
「もしも、」
『りっかあぁぁ!!!今しゅ』
わたしはブチッと終了ボタンを押してしまった。
もはやこれは条件反射だ。
仕方ない。不可抗力だ。
ふう、とため息をつくと性懲りもなく鳴り出すケータイ。
電源落としてしまおうか。
「出なくていいのか?」
「あーはい、平気です。多分兄さんですし」
家に帰ってからでも大丈夫でしょ、と考えるわたしに、約六個の目がこちらを向いた。
…………え。
ガシッと肩を掴まれる。