不純な理由で近づきました。




………うるさい。


耳に当ててなくてもふっつーに聞こえてるんですけど。


ギャアギャアと(主に兄さんが)うるさいケータイに向かってすぅ、と息を吸う。



「兄さんうるっさい!!ちょっと黙ってて!!」



怒鳴るように言えば、向こうから弱々しくはい、という声が聞こえた。


大声を出したせいか、みんな目を丸くしてわたしを見ていたけど、気にしたら終わりなのであえて電話に集中する。



『あはは、トモがいじけてるよー。
りっちゃんもきびしーねー』



クスクスと笑うナルちゃん。


ちょっと兄さんには悪かったかもだけど……うん。


今度またいっしょにお出かけしてあげよう。



「それでナルちゃん。さっき兄さんの言ってたことって?」



確か、今週の仕事がなくなったとかなんとか。


まさか、また兄さんが無理矢理休みをとったとかじゃないよね。


心配するわたしをよそに、ナルちゃんはマイペースにあぁ〜、と言って。



「トモがね、りっちゃんと遊びたいから〜ってマッハで仕事終わらせたんだよー。

だから今週は休んでいいよーって」


「そうなんだ」






< 122 / 257 >

この作品をシェア

pagetop