不純な理由で近づきました。



試しに後ろを見てみると、カチコチに緊張して座っているユスラさんが。


まぁ、気持ちも分からないではない。


ずっと憧れていた人がこんなに近くにいるんだもんね。


それどころかその人の運転してる車に乗ってるんだもん。


そりゃ緊張もするよ……



「あ、ここかなー?」



えい、と入ったところはいかにも高級そうな旅館で。



え、本当にここ?


と思わず目を疑ってしまった。


こんなところで何泊もしたら、相当なお金相がかかるんじゃ……


血の気が引く思いなんですけども。


とりあえず、と車を下りてみれば、先に着いていたらしい兄さんたちの姿があって。


やっぱりここなのかと頭が痛くなった。



ほんと、お金足りるかな……


半ばそんなことを考えながら車のドアを閉めた。



「六花ぁ、会いたかったあぁっ」



そう叫ぶやいなやむぎゅっと抱きしめられる。



「兄さん、メガネがずれる。
それにそんなに長い間じゃなかったでしょ?」


「俺にとっては一日千秋の思い」


「壮大だね」



と言いながら手を離さないあたり、わたしもこうされるのは嫌いってほどじゃない。





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