不純な理由で近づきました。
「大勢の女の子よりも一人、だろ?」
その笑顔が普段とは違って少し悪戯っぽく見えたのは気のせい、かな。
でもわたしにはその笑顔の方が生き生きとしているように感じて。
王子さまスマイルもいいけど、こっちの笑顔でも女の子は騒ぐんだろうなぁ、と考えていた。
「白崎さんも話はご飯のあとでも大丈夫だよね?」
あぁ、やっぱりうっとりしてしまうほどの甘いテノールボイス。
いいなぁ、なんて思いながらわたしは頷きを返した。
そのまま2人はわたしの前に座り、昼食を取り出す。
和やかに話しながらの昼食タイム。
これってかなり幸せなシチュエーションじゃないか?
あぁ、幸せ。
この声だけで胸がいっぱいでお昼ご飯なんていらないかも。
と思いながらお弁当を口に運ぶ。
わたしがご飯を食べ終わる頃にはすでに2人は食べ終わっていて。
わたしがお弁当を片付けるとタイミングよく枢くんが話しかけてくれた。
「それで、主に恭になんの用事かな?」
「あ、はい」
うわ、ちょっと緊張するなぁ。
ふぅ、と息を吐いて一ノ宮くんを見つめる。
「…あの、えーっと……」
どうしたものか。
人とあまり関わってこなかったせいか、こういうときどのように話を切り出せばいいのか分からない……
「……単刀直入に言います」
結局ストレートに言うしか思い付かなかった。
考えるのが面倒になったとかそういうワケじゃない。決して。