不純な理由で近づきました。




「……六花?」



いきなり聞こえた声にビクッと体が揺れる。


この声は、



「恭くん……」



振り返ると案の定、恭くんの姿が。



「もう……脅かさないで下さいよ」



あぁ……本当にびっくりした。


バクバクと忙しなく動く心臓を落ち着けるために大きく息を吐く。


……あれ?反応がない。



「恭くん?」


「あ、悪い……」


「?」



どこかぼんやり、というか心ここにあらず、という感じの恭くん。


どうしたんだろう。



「その浴衣、」


「これですか?旅館からのサービスで借りたんですよ」



何せ今のわたしは着替えも何もないので。


すごくありがたい。



「……ってる」


「はい?」



何か言いましたか?と首を傾げるわたし。


恭くんは手づ口もとで隠すようにして、わたしから視線をそらした。


それに少なからずのショックを受ける。



そんなに見苦しいものだったのかな……


視線が落ちるわたしに、恭くんの声が届く。



「だから、その……似合ってる」


「はい……?」



似合、ってる……?


……わたしは今、褒められたのだろうか?







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