不純な理由で近づきました。
ポカーン、と恭くんを見上げて。
冗談を言っているようには見えない。
と、いうことは、本当に……?
さっきまで下がっていた気分が一気に上がる。
ついでにいい感じに冷めていた体温も上がったような気がした。
「あ、ありがとう、ございます……」
な、なんだか気恥ずかしくて、恭くんを真っ直ぐ見られない。
再び視線を下げたせいで、恭くんが1歩、わたしに近づいたのが目に入り、体に力が入る。
緊張と呼べるようなそれを誤魔化すように、わたしは慌てて口を開いた。
「あ、そ、そう!
さっきたまたまカインくんにも会って、ちょっと庭をいっしょに散歩したんです。
そのときに、カインくんにも浴衣のこと言われたんですよ」
「……なんて?」
「え?あ、えと、わたしっぽいって……」
あれ?そういえば、同時に恭くんに怒られちゃうなーみたいなことも言っていた気が。
わたしはその理由が全く分からないのだが、カインくんが言っていたことは間違いではなかったらしく。
「ふーん……」
………あれ?
どこか不機嫌そうにも聞こえる返事に、わたしは何かヘンなことを言ってしまったのかと焦る。