不純な理由で近づきました。




「あの、きょう、くん……」


「ん?」



いやいや、あの『ん?』じゃなくてですね。


しかもその声の素晴らしさと言ったら……



わたし、どうしちゃったんだろう……


ドキドキ、する。


恭くんはただ、髪に触れているだけ、なのに。



「癖、ついてるな」


「あ……ちゃ、ちゃんと乾かさずにまとめちゃったから、かな?」



うろうろと、落ち着かずにさ迷う視線。


な、なぜか恭くんを直視できない……


きゅ、と思わず唇を噛むと柔らかな指先がそこに触れた。



「噛むな。血でるぞ」


「う……」



その前に鼻から血が出そう。


恭くんの手、指が、わたしの唇に触れ……


考えてしまうとカァッと頭に血が昇り。


ひゃあっと内心で意味不明な悲鳴を上げるけど、実際は口をパクパクさせるだけ。


なんの言葉も出てこなくて。


躊躇いながらも視線を上げると、バッチリと絡む視線に、心臓が大きく跳ねる。



「あ、ぅ…えと……」


「ん?」







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